JupyterLab環境構築から始めるTerraform
はじめに
データアナリティクス事業本部の鈴木です。
最近はデータ分析をメインにしつつ、AWSやGCPなどのパブリッククラウド活用にも関心がある方が増えてきたように思っています。
クラウドサービスを勉強していると、次はInfrastructure as Code(IaC)に関心が出てきます。とはいえ、いきなりクラウド上のリソースを作るのはハードルが高く、なかなか手が出ない方も多いのではないでしょうか。
IaCツールの一つであるTerraformは、クラウド上のリソース以外にも、ローカルのDocker環境の管理が可能です。本記事では、データ分析をしているとよく利用するJupyterLab環境を、TerraformとDockerで作成することで、Terraformに入門していきます。
Terraformでやりたいこと
Jupyterが公開しているJupyterNotebook Data Science Stackイメージを起動します。
例えば、Docker Composeを使って起動する場合、以下のようにdocker-compose.ymlを作成してdocker-compose up
で起動すると、ローカルとのデータ共有もできてとても便利です。
今回は同様の設定で、Docker Composeの代わりに、Terraformで起動してみましょう。
version: "3" services: datascience-notebook: image: jupyter/datascience-notebook:514883dc662a volumes: - "マウントしたいディレクトリのパス"/:/home/jovyan/work ports: - 8888:8888 container_name: datascience-notebook-container environment: - JUPYTER_ENABLE_LAB=yes
なお、docker-compose.ymlの記載内容の詳細については、Docker Composeのドキュメントをご確認ください。
環境
私の実施した環境の情報を記載します。
- Terraform v1.0.2
- Docker Desktop Version 3.4.0 (3.4.0.5223)
- macOS Catalina バージョン10.15.7
TerraformとDockerはインストールされていることを前提とします。
やってみる
作業用ディレクトリを作成する
まず、作業用ディレクトリを作成し、移動します。
# 作業用ディレクトリ作成 mkdir learn-terraform-docker-container # 移動 cd learn-terraform-docker-container
main.tfを作成する
続いて、Terraformの構成を記載するmain.tfを作成します。
terraform { required_providers { docker = { source = "kreuzwerker/docker" version = "~> 2.13.0" } } } provider "docker" {} resource "docker_image" "jupyter_science" { name = "jupyter/datascience-notebook:514883dc662a" keep_locally = true } resource "docker_container" "jupyter" { image = docker_image.jupyter_science.latest name = "datascience-notebook-cntainer" env = ["JUPYTER_ENABLE_LAB=yes"] ports { internal = 8888 external = 8888 } volumes { host_path = "マウントしたいディレクトリの絶対パス" container_path = "/home/jovyan/work" } }
terraform
ブロックで、リソースを作成・管理に使用するプロバイダなど、Terraformの設定を記載します。今回は"docker"プロバイダを、Terraform Registryのkreuzwerker/dockerをソースとして定義します。
provider
ブロックではterraform
ブロックで定義した"docker"プロバイダの設定をします。なお、今回は特に指定はしませんでした。
また、Dockerイメージとコンテナの指定のため、resource
ブロックでdocker_imageリソースとdocker_containerリソースの設定を記載します。記載内容は冒頭で紹介したdocker-compose.ymlと同様になるよう設定しました。
resourceブロックの設定の補足
resourceブロックにはDockerイメージとコンテナの設定を記載しました。
docker_image
リソースのkeep_locally
は、terraform destroy
操作時にDockerイメージを削除するかどうかを制御します。今回は繰り返し起動することを見込んでtrueとしました。-
keep_locally
をtrueにしておくと、2回目以降terraform apply
するときはすぐにコンテナが起動しました。最初にterraform apply
する際はローカルにjupyter/datascience-notebook:514883dc662aイメージがなかったので、コマンド実行から起動までに90秒かかりました。 -
volumes
はDockerのvolumeオプションと同様です。host_path
にコンテナにマウントしたいローカルのパス、container_path
にマウント先のパスを記載します。
上記を含め、各リソースとオプションはDocker Providerのドキュメントに詳細が記載されているので、ぜひご確認ください。
コンテナを起動する
main.tfが書けたので、早速コンテナを起動してみましょう。
Docker Desktopが起動していることを確認して、下記コマンドを実行します。
※このとき、4GB弱の大きさのイメージをダウンロードするので、ご注意ください。
# 初回はワークスペースを初期化する terraform init # リソースを作成する terraform apply
terraform apply
を実行すると、本当に環境を作成するか聞かれるので、問題なければ yes と入力します。
Apply complete! と表示されれば、JupyterLabが起動できているはずです。
http://localhost:8888/にアクセスすると、以下の画面が表示されます。
JupyterLabにログインする
初回はコンテナに直接ログインしてトークンを確認します。
docker exec -it datascience-notebook-cntainer /bin/bash
ログインできたら下記コマンドでtokenを取得します。
jupyter server list
先ほどの画面のSetup a PasswordのセクションのTokenに取得したトークンを、New Passwordに設定したいパスワードを入力します。
入力できたらLog in and set new paswordを押すとログインできます。
ちなみに、上記操作を行うと、コンテナの/home/jovyan/.jupyter/configにjupyter_server_config.jsonが作成されます。このファイル内にハッシュ化された認証情報が記録されています。
main.tfのdocker_containerリソースに、下記でハイライトした部分を追加し、ホスト側のディレクトリに認証情報が残ります。以降の手順でterraform destroy
しても、同じパスワードでログインすることが可能です。
resource "docker_container" "jupyter" { image = docker_image.jupyter_science.latest name = "datascience-notebook-cntainer" env = ["JUPYTER_ENABLE_LAB=yes"] ports { internal = 8888 external = 8888 } volumes { host_path = "マウントしたいディレクトリの絶対パス" container_path = "/home/jovyan/work" } volumes { host_path = "認証情報を保存したいディレクトリの絶対パス" container_path = "/home/jovyan/.jupyter" } }
コンテナを停止する
コンテナを使い終わったらterraform destroy
で停止します。起動時と同様に、本当に環境を削除するか聞かれるので、問題なければ yes と入力します。
# リソースを削除する terraform destroy
感想
TerraformとDockerでJupyterLab環境を構築することができました。
また、今回はDockerプロバイダに限った例ではあったものの、main.tfを作成し、terraformコマンドで環境を起動することで、Terraformを使ってリソースを作成する雰囲気が掴めました。
普段のデータ分析環境の起動にTerraformを使うことで、Terraformが身近になれば幸いです。